女嫌いと男性恐怖症

「ハルは、そんなこと求めてないだろ」

 ネクタイを緩め、ふぅとイスに腰をおろした。

「ハハッ。ハルにアキか。春夏秋冬だな。それにどっちも男か女か分からない呼び方だ。アキらしい」

 そんなことまで気づく直樹に、長い腐れ縁はこれだから困ると、またため息をついた。

「どうするかはアキに任せるさ。法的手段を取れることは、できるだけ調べておく。必要なら声をかけてくれ」

「あぁ」と言って、直樹とパシッとハイタッチする。

 これだから長い付き合いは、と笑みを浮かべた。

 事務所を出ると、本屋に向かう。

 もともと休むつもりなのにスーツなのは、何も直樹を騙すためではない。
 ワーカーホリック気味の晶は、私服を持っていないのだ。

 本屋では過呼吸の本や、心理学の本を手に取る。

 いくら勉強好きが高じて弁護士になったとはいえ、自分の専門分野ではない専門用語の羅列には理解に苦しむ。

 パラパラと見ただけで、何冊か優しそうな本を手に取っては、元の棚に戻した。

 結局、何も買わずに、食材の買い物に向かった。
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