女嫌いと男性恐怖症
第11話 コーヒー

 マンションに帰ると、遥がご飯を食べずに待っていた。

「先に食べてろって、言えば良かったな」

 晶の言葉に、遥は首を振った。

「一緒に食べたいんです」

 そう言った遥は、席を立って味噌汁を温め直す。

 毎日一緒に食べるのが夢だったんですとか、面倒くせーこと言い出すなよ。

 そうは思っても、「一緒に食べたい」の言葉は、晶の心を温かくした。

「あの。直樹さんが来たのは」

 少し不安そうな目をしている遥に、説明が必要だったかと反省する。

「昨日読んでた本で知ったんだが、少しずつ苦手なことに自ら挑むと、自信がついて克服できるらしい」

 味噌汁をかき混ぜる手が止まる。

「苦手なことを、克服」

 ぶつぶつ呟いて、何かを考えている遥の手元で味噌汁がグツグツと煮立っていた。

「おい。味噌汁は大丈夫なのか?」

「あっ!」

 慌てふためく遥に、こいつ大丈夫かよ。と、無謀なことに挑戦している気分になっていた。
< 71 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop