女嫌いと男性恐怖症
第15話 涙

「あぁ。起きたか。」

 経済新聞を片手に、コーヒーを飲む晶が声をかけた。
 遥は、いつの間にかソファで眠ってしまったらしかった。

 いつものように、リビングの一人掛けのソファに座る晶の姿をとらえた遥は、ハラハラと泣き出した。

「おい。どうしたんだ」

 読んでいた新聞は、テーブルに投げ捨てられた。

 二人掛けのソファが、初めて二人掛けの意味をなすと、遥は晶の腕にしがみついた。

 初めて会った時を思い出す、そんな光景だった。

 ただあの頃とは違い、振り払おうとはせずに空いている方の手で、優しく背中をトントンとたたく。

「大丈夫だ。怖い夢でも見たのか? 今日は出かけたから、刺激が強過ぎたのかもな。急ぎ過ぎたか。悪かった」

 力なく首を振る遥に「大丈夫だ」そう優しく穏やかな声をかける。
 背中は、優しくトントンとし続けた。
< 99 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop