ラブリー
「スーツがシワシワになりますよ」

声をかけたと言うのに、小宮課長は聞こえていないようだった。

もう知らない。

自業自得だ。

彼の寝顔に向かって、わたしは心の中で呟いた。

「嫌いな食べ物だけじゃなくて、寝顔も変わってないのか…」

わたしは息を吐くと、シャワーを浴びるためにバスルームへと足を向かわせた。

それよりも…わたし、小宮課長に抱きしめられましたよね?

バスルームに入った瞬間、わたしはハッとそんなことを思った。

「よ、酔っ払った勢いだよ。

あんなものは抱きしめられたうちに入らない。

酔っ払った勢いなんだから大丈夫だよ。

論外だよ、論外」

わたしは首を横に振って抱きしめられたことを否定した。
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