副社長は束縛ダーリン

パッケージに印字する言葉まで考えていなかったので、割烹着を握りしめて、おどおどと答えていた。


ミートチーズコロッケは美味しいけれど、一度食べて味を知れば満足してしまい、十日以内にまた買ってくれる客は少なそう。

でも肉の松屋のコロッケは、食べ終えてもまたすぐに食べたくなるコロッケだと私は思っている。

ひとり一個じゃ物足りない。

ソースや醤油やケチャップと、調味料を変えれば味の変化も楽しめる。

スライスチーズをのせたり、大根おろしと大葉を添えるのもいい。

シンプルだからこそ食べる人の考えで自分好みのコロッケを作ることができて、味の広がりは無限大だ。


しかし、重役たちに厳しい視線を向けられては、それを上手く説明できず、私の顔は徐々に下を向いてしまう。


どうしたら、このレシピを採用してもらえるのだろう。

ミートチーズコロッケよりは勝算があると思っているし、私の中で最高のコロッケなのに……。


社長を説得するだけの語力を持たない私が言葉を失っていると、代わりに口を開いたのは悠馬さんだった。


< 324 / 377 >

この作品をシェア

pagetop