副社長は束縛ダーリン

そのとき、「すみません、お客様」と後ろから声をかけられた。

振り向くとそこには、紺色の上下の制服を着た警備員風の恰幅のよい中年男性が立っている。

怪しむような目で見られ、私はハッとして慌て始めた。


きっと不審者だと思われたんだ。

ミニトマトとバナナだけをカゴに入れて、何時間も店内をうろついていたら、そう思われるのも仕方ない。

でも私は決して怪しい者ではないんです。


「違うんです! ええと、私はコロッケ勝負の開発者で……」

「は?」


コロッケ勝負という言葉に、首をかしげる警備員のおじさん。

意味不明なことをいう怪しい人物だと、ますます疑いの目で見られ、「ちょっと来てもらえますか。奥の部屋で話しましょう」と言われてしまう。


奥の部屋ってなに!?

テレビのドキュメンタリー番組でやっていた、万引犯とかが取り調べられる部屋のこと?

私はなにもやってませんけど!


「怪しい者じゃないんです。私はただコロッケの売れ行きが気になってーー」

「はいはい、奥でゆっくり話を聞きますから。最近、商品にイタズラする人がいて困ってましてね」

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