【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「疑うなら、確かめてみろよ。あの御曹司に電話して聞いてみれば本当かどうかわかるだろ」
そう言って千葉くんは、テーブルの隅においてある私のスマホを指差した。
千葉くんの言うとおりだ。画面に数度触れれば、簡単に専務に電話をかけられる。
いつもどおりの無愛想な声で、『婚約するって噂を聞いたんですが、本当ですか?』って聞いてみればいいだけだ。
だけど、もし『そうだよ』って言われたら、私はなんて返せばいい?
ずっと密かに専務のことを想っていて、思いが通じるなんて馬鹿げた夢をみたことなんてない。
専務が私のことを好きになってくれるわけがないって、ちゃんと分かってた。
ただ彼のそばで彼のために仕事ができる。それだけで十分だった。
だけど、だけど……。
専務が誰かと結婚する。
そのことに、こんなにショックを受けるなんて思ってもみなかった。
「聞かねぇの?」
黙り込んだ私に、千葉くんが呆れたように言った。
「お前ずるいよな。すぐそうやって真実を知ろうとせずに逃げる」
「そんなこと……」
「そんなことあるだろ。昔だってそうだった」
苛立ったような口調を不思議に思って顔を上げると、千葉くんが私のことを睨んでいた。
「昔……?」
聞き返すと、不機嫌な表情で視線をそらされた。