【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

『婚約の噂は本当ですか?』そう一言聞けたらすっきりするのに、どうしても言えずに口ごもる。

だって、『本当だよ』って当然のようにうなずかれてしまったら、無表情を保っていられる自信がない。
専務に向かって『ご婚約おめでとうございます』なんて、言いたくない。言えるわけない。
そんなの、想像するだけで泣いてしまいそうになる。

鼻の奥がつんとして、慌てて顔をそらした。

「なんでもありません」

そう言ってまたスケジュールに視線を落とす私に、専務が眉をひそめた。

「ホテルで会った男に、付きまとわれてんの?」

乱暴な口調でそう聞かれ、驚いて持っていた手帳を落としそうになる。

「どうして……」
「会社のエントランスの前で、詩乃ちゃんを待ち伏せしてる男がいたって聞いた」
「待ち伏せなんて、そんなんじゃ」
「じゃあ、あいつに職場を教えたんだ?」
「そういうわけではないですが」
「勝手に職場を調べて待ち構えてるなんて、立派な犯罪だろ。今日から帰りは俺が送るよ」
「そんなの、いいです!」

慌てて首を横に振った私に、専務が一歩近づく。
困惑してぺたりと垂れた猫耳に、優しく触れた。

「俺が詩乃ちゃんのことを心配するのは、迷惑?」

甘く囁かれ、背筋がうずく。
微かに首を傾げながら、私の顔を覗き込む綺麗な形の眉をひそめた表情が、ずるいくらい色っぽい。

 
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