【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
その時、驚いて目を見開いた私の視界のすみで、黒くふわふわとした何かが動いた。
あの黒い毛並みはハチの尻尾?
もしかして、ハチが死んだのは夢だったの!?
ぱぁっと顔を輝かせて振り返ると、白いシーツの上で長く黒い尻尾がパタパタと揺れていた。
けれどその尻尾はハチのものじゃなくて……。
「ええええええぇっ……!?」
信じられない事態に思わず叫び声をあげてしまう。
ハチの毛並みそっくりの黒々とした立派な尻尾は、体をねじって見下ろした自分のお尻、尾てい骨のあたりから生えていた。
私が驚いた途端、尻尾の毛が逆立つ。まるで私の感情と連動しているように。
「なに、これ……!?」
その時、ドアの向こうで専務の声がした。
「詩乃ちゃん、どうかした?」
私の叫び声を聞いて、驚いてかけつけてくれたんだろう。
専務がドアをノックしながら、心配そうに私の名前を呼ぶ。
「専務……っ」
「詩乃ちゃん、開けるよ」
途方に暮れた私の声色を聞いた専務が寝室のドアを開け、そしてそのまま固まった。
猫みたいな長い尻尾を生やし、ベッドの上でちょこんと座り込む私の姿を見たら、驚いて固まるのも仕方ない。
しかし専務は目を真ん丸にして、私の顔の上あたりを見ていた。