おはよう、きみが好きです



『大ありだよ!!』

「むー、でも、無理なものはムリ!!」

『はぁ!?意味わかんねぇ!』

「とーにーかーく、下駄箱に入れといてね!」


あっ、それなら……。

あたしが八雲に借りるだけっていうのもあれだから、あたしからはこの『初恋マカロン』の少女漫画を貸してあげよう。



「明日、あたしのとっておき貸してあげるね!」

『は?とっておきって何?』

「お楽しみに〜、じゃあまた明日!」

『あ?おい、ちょっと……』



ブチッと、昨日とほとんど同じ流れで通話を切った。

だって、また詮索されそうだったし。

その時にうまくかわせる自信がない。



「今のところ5刊まで出てるから、まとめて下駄箱に突っ込んどこっと」


ベッドから降りて、本棚の『初恋マカロン』計5刊を手に取ると、紙袋に詰めた。

これくらいなら、下駄箱に入るよね。


「あ、そうだ……ただ漫画だけっていうのもつまらないから……」


あたしは漫画の中で一番注目してほしいところを、付箋で表紙にペタッと貼り付けた。


八雲、楽しんでくれるといいなぁ。

八雲が少女漫画を読んでるところを想像すると、ちょっと面白いけどね。

でも、明日はいつもより楽しくなる気がする。

そんな期待を胸に、あたしは今度こそ、ベッドで眠りについたのだった。


< 31 / 259 >

この作品をシェア

pagetop