ビターチョコをかじったら

「…後日じゃだめ？」
「どうせ考えないだろお前。」
「…そんなことない。」
「どうせ照れて言えねーだろ。もう大体わかってんだよ。」
「…じゃあ私の気持ちもわかってるでしょ？」
「わかってるけど、それでも聞きたい男心っつーもんがあるんだよ。」
「待って。じゃあ先に相島さん！好きなの？私のこと。」

　そういうことだよって、どういうことだ。

「…お前今の訊き方ずるくね？」
「なんで。」
「なんでじゃねーわ。今の普通に可愛いだろ。バカか。」
「バカですってば！」
「知ってるっつの。あーそうだよ好きだよ。お前のこと好き。可愛い。文句あるか。」
「文句ない！ありがとう！とてもありがとう！」
「おい待て。」
「え？」
「そこは私も好きですだろ。」
「…そう、だけど。」
「いや待て。俺だけ言うのはずるい。お前も言え。」
「ええー…だって恥ずかしいし…わかってるでしょ？」
「ふざけんな。有り得ねー。言えよ。」
「…じゃあ1回だけしか言わないんで心して聞いて…ね？」

　覚悟は決めた。相島の腕を引いて、そっと耳元で呟く。

「…好きですよ、相島さん。」

　とても苦手なビターチョコを、ちょっと渋い顔して食べてくれることも。
　ブラックコーヒーを代わりに飲んでくれることも。
　仕事の腕を信じてくれることも。
　美味しくて安いご飯に付き合ってくれることも。
　愚痴をきいてくれることも。
　話したことをきちんと覚えていてくれることも。
　相手が相島だから、嬉しいのだ。

「…待てってお前。ほんっといい加減にしろよ。」
「…だって言えって言ったじゃん、相島さん。」
「言ったけど、誰が不意打ちしろって？」
「不意打ちでした、今の？」
「とっとと仕事終わらせろ。んで逆襲させろ。」
「逆襲とか好きな人に言います、普通？」
「今更だろ？」

　本当のことが言えたなら、きっと。

「…へへ。」
「は？何笑ってんだよ。」
「思わぬ展開だけど、嬉しいなって。」
「何で今そういう顔すんだよ、バカか。」
「いたっ！」

*fin*