ビターチョコをかじったら
「なんだよ?」
「え?」
「なんか視線を感じるけど、なんか顔についてる?」
「い、いいえ!ついてない!」
「…なんか、怪しいけど。何?」
「…何も。」
「ふーん?あ、それ貰う。」

 ひょいと紗弥の飲みかけのペットボトルが奪われる。

「あ、相島さんの分あるのに!」
「お前が嘘つくから悪い。」
「…み、見てただけ!」
「はぁ?」
「いつもよりかっこよく見えるから見てただけ…だし。」

 結局白状せざるを得ない。せっかくのデートだ。雰囲気が悪くなるようなことはしたくない。しかし、雰囲気は守れども、顔の赤さまではカバーできない。

「…んだそれ。どんだけ運転ってお前の中でレベル跳ね上がる行為なわけ?」

 ぶっきらぼうな言い方だが、相島の耳が赤くなっているのに気付く。少しだけ嬉しくなって、笑顔になる。

「いくらでも、レベル上がるけど?」

 そっと、相島の耳を引っ張ってみる。赤いだけじゃなくて少しだけ熱い耳に、自分の頬と同じ温度を知る。

「なっ…!?」
「相島さん前見て前ー!安全運転でお願いしまーす!」
「…お前、後で覚えてろよ?」
「な、何する気で…?」
「ここで言ったら意味ねーだろ。」

 相島は右の口角を上げて、にやりと笑った。
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