【短編】君と卒業式
突然、身体が引き寄せられると、柔らかくて温かいものが、唇に触れて。
視界がマオの顔でいっぱいになった。
いつもの通学路。
いつもの制服。
そんないつもの場所と格好で。
いつもの私たちなら考えられないことが。
起こった。
「……マ、マ、マオ……?」
唇を離したマオは、顔がすっごく真っ赤で。
このまま倒れちゃうんじゃないかと冷静に心配してしまうほど。
私だって、心配されるほど体のあちこちから汗が吹き出て、クラクラしている。
「………幼なじみ卒業証」
「え?」
私に倒れるように抱きついたマオの耳元にそう聞き返す。
私の心臓の音なのかマオの心臓の音なのかわからないけど。
ドキドキとうるさい。