最後の恋
「その前に…一つだけ聞いていい?」


彼はここまできて尚も私を焦らすのか…だけど言われた言葉と彼の目にはさっきの私のように懇願の色が見て取れた。


「今日から…俺だけの杏奈になってくれる?」


そして、このタイミングでそんな目をして言われたら…今の私には、もう断れるわけがなかった。


首を縦にして応えた私に、安心したように微笑んだ彼がゆっくりと近づき優しいキスが重なった。


チュッと小さな音を立て触れた唇が離れると、また視線はもつれるように熱く絡ませ合ったまま彼が少しづつ奥へと進めてきた。


彼の目に見つめられながら…私の顔も徐々に快感で歪んだものに変わっていく。


「俺をちゃんと見て…杏奈っ…」


彼を受け入れたばかりなのに、お腹の底から湧き上がる何かが少しずつ押し寄せてくる…


そんな私に彼は愛しそうに目を細め熱い視線を向けたまま、最後は深く沈んだ。


その瞬間、押し寄せてきた波に飲みこまれるように私の体は小刻みに震えた。
< 112 / 277 >

この作品をシェア

pagetop