最後の恋

聞き覚えのあるその鳴き声に不意にその方向に目を向けると、ちょうど曲がり角からママと斉藤さんが出て来る所で、私達はバッタリと鉢合わせをしてしまった。


「…あら…おかえりなさい。」


ママの目が私の隣の一ノ瀬君を見て、キラキラして声も心なしか弾んでいるのは気のせいではないだろう。


「…ママ、ただいま…。」

「あ…こんにちは。松野さんのクラスメイトの一ノ瀬と言います。」


彼がそう言ってペコリと頭を下げたから、私も慌てて状況を説明した。


「あ…えっと…初日に偶然タケ達と友達になったから今日も見送りに来てくれてねっ！…それで、今も私を送ってくれたの…。」

「あら、そうだったの。ありがとう一ノ瀬君。てっきり杏奈にもママの知らない間に彼氏が出来たのかと一瞬思っちゃった。」

「ちょっ…ママ何言ってんの！そんな勘違い一ノ瀬君に失礼だから…。」