溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「私、橘さんから教えて欲しいんです……」
その言葉に、橘は小さくため息をつく。
そしてそれからありすの顔を覗き込み、
橘を捉えていた手をはがすと、
そっと自らの手のひらに繋ぎ直し、
それからふわりと
ベッドの上にありすを引き上げ座らせる。

「橘さん?」
「……仕様のないお嬢様ですね。
だったら……教えて差し上げます。
ですが……それなりのリスクは覚悟くださいね」

「──え?」
驚いたありすの頬をそっと優しく撫でると、
橘は柔らかく、ありすの唇に自らのそれを寄せる。

ありすが触れた時よりもっと優しく、
一瞬触れて、ふっと柔らかく笑みを零す。

「……貴女は、覚えてないでしょうが……」
一言囁くと、その唇はありすに再び触れる。

ぎしりとベッドのきしむ音がする。
ぎゅっとありすは橘に腰を抱かれて、
引き寄せられて、
ドキドキする胸の鼓動がおさまりがつかなくなる。

さっき思った以上に、
その唇は甘くて柔らかい。

何度も角度を変えて触れられるたびに、
その唇は柔らかくなり熱を帯びる。

「……少し、力を抜いてください」
一瞬、唇を離し囁くと、
開いた瞳に見える橘の顔は、
今まで見た中で一番優しく見えた。

その瞬間、緊張でガチガチになっていた体は
ほんの少し緩み、ようやく呼吸が出来る。
その唇にちゅっと再び唇を落とされて、
くすりと笑う橘の気配を感じる。

「……可愛らしいですね」
その言葉は執事の彼が言う言葉より、
もっと艶めいていて、
ありすはゾクリと背筋を震わせる。

「──っ」
瞬間じわりと熱が全身にこみ上げてきて。
涙が潤んできてしまう。

「……いきなりこの上の段階は辛そうですね。
大人のキスの練習はこの次にしましょうか?」
ぎゅっと愛おし気に抱きしめられて、
ありすは言葉を失う。

「それでは私はお茶を淹れてまいりますね」
そう言って、ベッドから腰を上げた次の瞬間、

橘はいつもの橘に戻っていて……。
ありすは言葉を失ってしまう。

(さっきのキスは……橘さんが思う『キス』
だったのかな……)

ドキドキする鼓動が止まらない。
心地よくて、気持ちがふわふわしている。

今日した全部のキスの中で、
一番幸せなキスで。

(だったら……この間したキスと、
今したキスは何が違うんだろう……)

ありすの頭の中は疑問符だらけだ。
ふわふわした気持ちのまま呆然として、
ありすは橘に呼ばれるまで、
ベッドに座り込んだまま、
立ち上がる事すらできなくなっていたのだった。
< 70 / 70 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:9

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

【完】確信犯な彼 ≪番外編公開中≫

総文字数/156,450

恋愛(純愛)210ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
***************** ──生まれて初めて恋をしました。 好きで好きでたまらないのに、 けして受け入れてくれなくて。 なんで受け入れてくれないのに 優しくしてくれるの? いつも助けてくれるの? ──いったい私に、何を隠しているの? いっそのこと、 先生の事を諦められたら楽なのに。 **************** 佳代(看護師) × 拓海(小学校教師) **************** 諦めさせてくれない 少しズルくて、優しい彼との、 焦れ焦れな、恋の話。 **************** 星志乃様、 usamo様、 素敵なレビューありがとうございます。 **************** 2017.3.2 完結 2017.3.5 番外編 episode:hayata + α(プロポーズ話) 2017.3.7 番外編 episode:asoh 2017.3.9 番外編 episode:takumi 2017.3.12 後日談 とある夫婦の運動会 *****************

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop