もう一度、あなたに恋していいですか
生徒の彼女

昔から僕は女運がないのか、はたまた見る目がないのかわからないが、女性との付き合いが長く続くことはなかった。

中学、高校と男子校で女の子との関わりもなく大学へ進学。
しかし入学した学科は保健学科だったため、女の子が多かった。

大学でも特に彼女がほしいわけでもないし、女の子とも必要以上に関わることはないだろう。
そう思っていた。

しかし”彼女”の存在を知ったことにより、僕の学生生活が変化を見せた。
彼女と出会ったのは大学1年生の春。

「隣、空いてる?」

月曜1限の講義前にそう話しかけてきたのが、彼女の存在を知ったきっかけだ。

「はい」

これが僕たちが交わした初めての会話だった。
それから彼女は月曜1限のときは毎回、僕の隣に座るようになった。

別に会話をするわけでもなく、ただ隣で講義を受けるだけ。
終われば彼女は会釈をして去っていく。
ただそれだけの関係だった。

「西條くん。申し訳ないんだけど教科書見せてくれないかな。忘れちゃって」

5回目の月曜1限の講義で、彼女はそう話しかけてきた。

「いいですよ」

90分の講義の間、僕の隣…いつもより近い距離に彼女は座った。

僕は彼女の名前も知らない。
けれど彼女は僕の名前を知っているようだ。
ただ同じ学科だということはわかる。

他の講義でも見かけるからだ。
ただそのときは女の子の友達といるけれど、この講義にはいないようだ。
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