秋恋祭り (あきこいまつり)
 俺はいつもの年と何かが違う…… 胸の奥で微かに揺れている物があった。


 祭りの準備の日は、昼食を家庭部の人達が用意をしてくれる。


「美夜ちゃん、一緒に食べよう!」

「うん」


 自分でも笑ってしまった。

 高校生じゃあるまいし、おじさんに片足突っ込んでいる俺が、お昼を一緒に食べる事に気持ちが軽くなるのだから……


 しかし、俺は久しぶりに会った同級生の綾乃(あやの)に声を掛けられ、美夜の事が気になったが話を切れず、美夜と昼を一緒に食べられなかった。


 一緒と言っても、長テーブルに銘々に座って皆で食べるのだから……
 そもそも誘う事事態がおかしいのだ。

 だから、それほど気にする事も無いと思っていた。

 しかし、美夜は俺の顔を見るなり言った。


「嘘つき!」


 美夜は本当に悲しそうな顔をして唇を噛んでいた。

 俺の胸に深い罪悪感みたいな物が渦を巻いた。
 それは、昼を食べられなかった事じゃない…… 

 『嘘つき』という言葉に俺は反応したのだ。


「嘘つき、じゃない!」

 俺は何故、こんなにはっきりの美夜の目を見て言ってしまったのだろう……


「明日、美夜ちゃんの会社に顔を出すから…… 絶対に……」

「本当?」

 美也の顔が明るくなった。


「俺は、嘘つきじゃないから……」


 こんな事で喜ぶ美夜の顔を、可愛いいと思ってしまった。
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