秋恋祭り (あきこいまつり)
最後の大三国の火が爆音とともに弾け祭りは終わった。

俺はそっと美夜の肩から腕を外し、頬に優しく触れた。好きだよと思いを込めて……


俺は神社の境内の裏に身を隠した。そこからは美夜の姿が見えた。
必死で俺を探す姿が見えた。

ごめんな…… もう、探さないでくれ……


美夜が法被の袖で目を押さえる姿が見える。
泣いているのか? 走って行って抱きしめたくなる気持ちを必死で抑えた。

美夜を抱きしめてしまったら、もう俺は戻れない…… 

これ以上は美夜を悲しませるだけだ……

ごめんな…… ごめんな……

俺はずるいよな…… 自分の口から美夜にはっきりと言うべきだったんだろう……

でも、美夜がもしそれでも俺といたいと縋ったら、俺は振り切る自信がない……

今なら、祭りの錯覚だと忘れる事が出来るだろう? 俺は心の中で美夜に問いかけた。

俺は、こんなに苦しい恋がある事を知った。
まさか、秋恋祭りで本当の恋に落ちるなんて……

 

神社の境内から、俯き去っていく美夜を見届けると、俺は秋恋神様に背中を押され、
妻の待つ家へと重い足を運んだ……



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