恋愛預金満期日 
恋愛預金申し込み
 仕事と言うものは、真剣にやり出すとやる事だらけだ……

 今までどれだけ自分が手を抜いて来たが分かる。

 だが、やれば成果が出ると楽しいもので、窓口に来る客とも信頼関係が出来ている気がした。


 午後一時三十分を回った。

 彼女が来る頃だ…… 


 店内の「いらっしゃいませ」と同時に入り口を見た僕は時が止まったように動けなくなった。


 彼女の長い髪はばっさり切られ、彼女が歩くと左右に髪が揺れ、微かに耳元からピアスが見える。

 キラキラと言う言葉は彼女の為に作られたと思うほど、キラキラという言葉がふさわしく、輝いて美しかった。

 いつものように笑顔で軽く頭を下げた彼女は、可愛いらしさを通り越して僕の胸に突き刺さった。


「海先輩、よだれ出ていますよ」

 神野の声に僕は我に返り、口元を慌てて手で拭いた。


「嘘です」

 神野はニヤニヤしながら仕事に向かった。


 彼女は総合窓口の処理が済むと、融資の僕の居る窓口へ来た。

「沖田建築です。手形の一覧の頂きたいんですけど……」
 彼女が僕に言った。

 僕は封筒をさし出すと……

「髪、切ったんですね…… 素敵です」
 と思わず口から出てしまった。


「ありがとうございます。でも、こんな時期に切っちゃだめですね。襟元が寒くて……」

 彼女はクビを竦めて見せた。


 可愛い―。


 僕の顔からは火が吹き出しそうな勢いだ。

 彼女は封筒を鞄にしまい、頭を下げ待合ソファーへと向かった。


「海先輩、よだれ」
 神野の言葉に、慌てて口元を手で拭いた。


「だから、嘘だってば……」
 
 神野は軽くため息をつき、少し笑った。
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