恋愛預金満期日 
 その日、僕の人生を大きく左右する出来事が起きた。

 珍しく僕は部長に呼ばれた。
  

「海原、河内産業の件上手く行っているようだな?」
 部長は表情一つ変えずに言った。


「ありがとうございます」
 僕は頭を下げた。


「実は、君に異動命令が出た」

 部長の言葉に、頑張って来たつもりだったもりが、とうとう左遷か…… 

 何処の僻地に飛ばされるんだろう? 僕はそんな事を考えていた。


「どこへ?」
 僕は力なく聞いた。


「東京の本店だ……」

「えっ……」

 僕は聞き間違えかと思い、もう一度聞き返してしまった。


「東京だ…… 聞こえんのか?」


「そんな、バカな……」


「お前をわざわざ呼んで、バカを言うわけ無いだろう? 良かったな。栄転だぞ!」

 部長は僕の肩を強く叩いた。


「…………」


「二週間後に異動だ…… 準備頼むよ」


「はい」

 僕は信じられないまま返事をした。

 僕の勤務する長野から、東京の本店への異動など考えられない事だ…… 

 僕は頭の中で整理を始め、段々と状況が見えて来た。


 そうだ、彼女とはどうなるんだ? 

 僕の頭も心の中も彼女の事でいっぱいになってしまった。
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