意地悪な両思い

 それからアンケートを部署の全員に配り、回収を夕方に持ち越すと、一枚なぜか余ったアンケート用紙をデスクの引き出しにとりあえず片す。


そうした次に、付箋で指摘された箇所を改めて見直し始めると、思った以上手直しが必要な状態にガクッと思わず頭が落ちた。

それこそ午前の仕事時間は、そいつに全部奪われちゃうぐらいに。


はあーあ、早速予定変更ですか。
本当は別の書類に取り掛かろうと思ってたんだけどな。

じろりと睨むと、負けじと付箋たちは俺の相手からだよと忌々しく見つめてくる。


はいはい取り掛かりますよーだ。
やっと諦められた私は手を動かし始めた―――でもその前に。

もういっこ。
私はちらりとパソコン脇の隙間を覗く。


うん、出勤してる。


隙間の先に見えたのは、大きな背中。
そして藍色のスーツ。

藍色のそれは、いつも私に教えてくれる。


それが速水さんだって。


 変なもんだけど、こういうの恋愛パワーっていうのかな。
彼の背を見ただけだってのに自然と英気が湧いてくる。


一日の元気の源。
それが速水さんの存在。

彼には絶対言えないけど、本当は心の底でちょっぴり思ってる。


彼にとっての私もそうだったらいいなって。

「よし!」
 私はキーボードをたたき始めた。

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