意地悪な両思い

「忙しかったの?」

「うん。市田は?」

「まぁまぁ?」
 本当はケッコウ大変だったけど速水さんに比べたら、へでもないだろうから。


「速水さん。」

「ん?」

「…今日のことなんだけど」
 上目遣いで、前髪の間から覗く彼の瞳にどきどきしながらも、優しい彼の雰囲気に話したかったことを切り出す。

そのまま私はもし手伝いが長引いて遅くなっても行ってもいい?と続けようとした。それで遅いからって断られたとしても、明日とかそれでだめなら来週とか。速水さんどうかな。


でも。


「またにしよっか。」


「え?」

「今日帰れないだろ。
市田のことだから、雨宮さんたちのことが気になって。」
 速水さんは下を向いて苦笑いを浮かべる。

「それわざわざ謝りに来たんだろ?
ごめんな、市田にまで××会社のことで迷惑かけちゃったな。」

「あ、ううん……それは気にしないで。」
 透視が。

外れることもあるんだな、そりゃそうか。


「速水さんは、忙しいの?」
 恋しさからぎゅっと触れてる指に力をこめる。
本当は気づいてほしい。私の気持ちに。


あーあ、楽しみにしてたのにな。


「昼から頑張んないとって感じかな。」

「そっか、私も頑張るよ。」

「うん。」
 彼も軽くきゅっと手に力をこめた。


「ねぇ速水さん。」

「ん?」
 そこで私は気になってることを聞いてみることにした。話してくれるか、彼がどういう反応するのか分からないけれど、そのために必死に追いかけたんだから。

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