おはようからおやすみまで蕩けさせて
「えっ…でも、あの時は逆を…」


プロポーズの前夜の話を持ち出され、「あれはお酒で酔ってたから…」と言い訳した。


「貴方の声が父のように聞こえたの。私は鍵っ子で確かに寂しい思いもしたけど、誰かを迎え入れるのは嬉しかったの」


帰ってきた時に両親の顔が明るくなっていくのを何度も目にした。
その度に寂しさも吹き飛んでいき、嬉しい気持ちばかりが膨らんだ。


「今直ぐでなくてもいいから家庭に居させて。家事も貴方ほど完璧じゃないけど努力するから」


こんな簡単なことを口にしなかったばかりに疲れきった。

些細なことでも言葉にしないと、相手には伝わらないんだ。



「お願い…」


小首を傾げて願うのは、彼が一番弱いことだと知ってる。



「勿論、それはいいよ。俺も一年後にはそうして貰うつもりでいたから」


耳を疑うような言葉を言いだし、理由を話すよ…と背中を押された。


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