おはようからおやすみまで蕩けさせて
(一人にした途端、色気付いたとか思われる?)


それも困るなと迷いながらドアレバーを下げて押した。
少し肌寒いけど、今日も天気は良さそうだ。


(そういえば天宮さんは着替えを取りに戻ってくるのかな)


一昨日の夜は一晩だけのつもりで用意してたみたいだけどいいの?
私のいない間にスーツの着替えを持っていくつもり?


玄関前で彼が来るかも…と少しだけ待った。
来る気配もないから歩きだし、やっぱりセメントの上に息を落とした。


ダメでデキない妻だけど彼に会いたい。
会っても何を言えばいいか分からないけど顔が見たい。


(ホントに私、我が儘なことばかりしてる……)


天宮さんごめんなさい。
軽蔑をしてもいいから私をオフィスで待ってて欲しいーー。



営業ブースで毎朝彼が座ってた席を思い出した。
あそこに彼が居ないから、私はイライラが募ってるんじゃないのか。

昨日の朝、あそこに彼が座ってるのを見た時は、正直すごく安心してホッとした。


あの席に座るのは私じゃダメだ。
仕事のデキる彼が居るべき場所ーー


(それも含めてもう一度きちんと天宮さんと話そう。いろんな気持ちを全部吐き出して私の気持ちを伝えるんだ…)


彼の思いも受け止めて聞こう。
私達の関係をこのまま蔑ろにしておいてはいけない……。



そう決めたら急に大股で歩きだした。

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