【完】君しか見えない


張り裂けそうな気持ちが、その必死な表情から伝わってくる。



でも、十羽を気にかけてやれる余裕なんてなかった。



目を眇めて、口を開く。



「おまえさ、ムリして俺と付き合ってんの?」



「……っ」



十羽の目が見開かれ、腕を掴む力が失われた。



俺はその腕を振り払うようにして、踵を返すと再び歩きだす。



十羽は追ってこなかった。







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