円舞曲はあなたの腕の中で~お嬢様、メイドになって舞踏会に潜入する~
エリオットと、メアリーが二人の姿を
見つけて駆けつけて来た。

エリノアも、メアリーからいろいろ
聞きたがったが、すぐに人に囲まれて
身動きが取れなくなった。

「エリノアおめでとう」
メアリーに言われた。

「えっと、これでよかったのかしら」

エリノアの頭に、疑問が浮かんだ。



メアリーは、ウィリアムと結婚しようと思ったことはなかったのか?

おめでとうって言ってたけど、もともと、ウィリアムと結婚しろと言われていたのは、姉の方だ。

「メアリー!」

彼女のもとに行こうと思ったのに、
どんなに前に進んでも、

周りの人に、婚約者を独占しては、
侯爵様に叱られると、ウィリアムのもとへ帰されてしまう。

だから、彼女に尋ねるには、スカートに
阻まれて、大きな声を出さなければ
ならない。

それは、この場にふさわしくない。


エリノアは、後で部屋に行って
メアリーから聞き出そうと思った。




曲名と順番が書かれたプログラムが
配られ、横にはウィリアムが
自分の名前を書いた。

横の空白には、予め踊りたい相手の
名前が書かれてあった。


踊りが始まる。

一曲目のカドリールがスタートした。


エリノアは、自分が呼ばれるとは
思っていなかったから、いつものように、集まった人々を見ていた。

「エリノア、行くよ」

「行くって?どこへ?」

「エリノア、招待客のなかで最も地位が
高いのは、ブラッドリー侯爵家だよ。
だから、君は女主人候補だろ?
さあ、踊るよ」

「ええ、そうだったわね」
エリノアは、苦笑いをした。


カドリールは、
4組の男女の カップルが、
四角になって踊るダンスで、
男女が向かい合って、
手を取って回ったり、
すれ違ったりお辞儀をしたりして踊る。
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