キス税を払う?それともキスする?
 着いたのはイタリアンの店だ。
 もちろん個室でキス税を認証する機械もある。

「昨日は醜態をさらした。
 女性を連れて行く店ではなかったようだ。
 昨日の店は大学の後輩なんかを連れて行くと喜ぶんだ。
 いや…言い訳に過ぎない。」

 奥村は顔に出さないように努めているようだったが、少し表情が緩んだのを感じる。
 言い訳だとしても言って良かったと胸をなで下ろした。

「契約のことで議論を交わしたい。」

 本音は議論というよりも、契約したという確約を取りたい。
 それでも奥村さんの意見を聞かないわけにはいかないだろう。

「私もそのことで言っておきたいことができました。
 キス病について…。」

「あぁ。そのことなら承知の上だ。」

「知って…。」

「君は今朝のニュースで知ったのか。
 最後まで視聴してないのだろう?
 キス病は不特定多数の人物との接触が特に問題視されている。」

 この件は僕に取っても重要だ。

 南田は言葉を重ねた。

「その点では僕も君と重要な取り決めをしたいと思っていた。」
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