キス税を払う?それともキスする?
「彼女さんいるんですか?
 いいじゃないですか〜。認証くらい。
 減るもんじゃないですよ。
 私、こんなイケメンとできるなら宝物にする〜!」

「ヤダ〜大袈裟〜!でも私もキスしたい〜!」

 忘年会シーズンだからだろうか、酔っ払っているのか女の子たちはノリノリだ。

 はぁ。早くどっか行ってくれないかな。
 それとも南田さんもキスくらい、どってことないからしちゃうのかな…。

 そう思っている華の体に何かが当たった。

 南田の脚のようだ。
 軽めだったが蹴られたようだった。

「迷惑だと言っている。」

 怪訝そうな声と蹴りが「こうなったのも君のせいなんだから顔を出せ」と言っているようだった。

 吹き出しそうになるのを必死にこらえる。

 無理無理!この状況でどうやって登場するのよ!私!!

「いいじゃないですか〜。キスの一つや二つ。」

 声がさっきよりも近づいて南田に女の子が迫っているのが分かる。

 ストーップ!って登場すればいいの?どうすればいいの?そんなことできないよー!

 焦る華の耳に驚きの言葉が届いた。

「僕は好きでもない人とはしない。」


 相容れない様子に諦めたのか
「ざんね〜ん!」
「いい男は簡単にはしてくれないって!」
「ケチ〜。」
 様々な声が遠ざかる。

 今、なんて言いました?

 華はグルグルと頭を巡らせた。

 すると隣にストンと南田が座った気配を感じた。

「全く。君のせいでとんだ目にあった。
 …そもそもは僕のせいだが。」

 動揺で話が頭に入ってこない。

「まだ泣いているのか。悪かった。僕に関わると迷惑をかける。
 だから離れたのだが…関わった以上は離れてはいけなかったようだ。」

 どうしたんだろう。普通に理解できる会話…。

「契約を…今一度結んでも構わないだろか?」

 コートを持ち上げて南田がのぞきこもうとしているのが分かる。

 契約って…それってどういう…。
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