キス税を払う?それともキスする?
 次の日の朝。テレビをつけるとどこもかしこもキス税の報道だった。

 ガッカリしてリモコンを持ち上げたテレビを消すはずの手が止まる。

「皆さん!ここがあのキス税の認証機械を作っている会社です。」

 映し出されたのは華たちの会社だった。

 驚いて食い入るようにテレビをみつめる。
 急いでボリュームを上げた。

「キス税の発案者、大沢議員との癒着があったとの情報があり、ただいま家宅捜査が始まりました。」

 テレビにはいつもの見慣れた会社のビルが映っていて、そこにたくさんの報道陣や警察が押し寄せていた。

「うそ…でしょ?」

 華は呆然としたまま動けずにいた。


 会社に行くと報道陣にマイクを向けられた。

「大沢議員との癒着について何か知っていましたか?」

「問題の社員さんについて、ご存じのことがあれば…。」

 様々な質問がされても、出社する人は皆、顔を伏せて
「すみません。何も知らないんです」
 と足早にビルの中に逃げ込んだ。


 会社に関わる大きなニュースを会社から知らされるのではなく、いつもテレビからってどうなんだろう。

 毎度のことの上に、今回のことはマイナスの情報だったため、みんな口々に不安を口にする。

「大丈夫かな?うちの会社。」

「大企業だから安泰だと思ってたのに。」

「ねぇ。癒着してた社員の人って…。」

 まだ大沢議員との癒着があったと確定したわけではなかったのだが、様々な憶測が飛び交う。

 そして、誰かがつぶやいた言葉に華はドキッとした。

「部長の派閥が大沢議員とつながりがあるんじゃなかった?」

「そうそう。〇〇大学出身の派閥でしょ?」

 華は南田が言っていた、我が社が大沢議員と深いつながりがある。という言葉を思い出す。

 南田も〇〇大学出身だ。朝からずっと姿を見ない南田に華は嫌な予感がしてならなかった。
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