キス税を払う?それともキスする?
南田湊人side

プロローグ 追憶

 華が南田たちの部署に配属して間もない頃。

 華と南田がキス税の契約をする何ヶ月も前。

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 今日は新しく入ってきた新人の歓迎会。
 新人だから新しいのは当たり前だが。

「おっとゴメンね。」

「いえ。こちらこそ失礼しました。」

 目が悪いのに眼鏡をかけてこなかった南田は人とぶつかりそうになって謝られた。

 なぜかけてこなかったのか。
 それは友人の宗一に言われたからだ。

「眼鏡外してけば普通に喋れるんじゃないのか?」

 その一言を鵜呑みにしてしまったのだ。

 南田は飲み会が苦手だった。

 そもそもが会話というものが苦手だったし、飲み会で座敷なんてのは、もっといけない。親しみを込めて近づいて話してくれているのは分かるのだが、近過ぎる距離が南田には苦痛で仕方なかった。

 特に女の人は困る。
 どう対応しても間違っているような気がして、近づかないのが懸命だと肝に銘じていた。

 そこで先ほどの「眼鏡をかけなければ」になるわけである。

 前々から
「コンパで女の子と話すのが苦手だと言うなら見えなきゃいい。眼鏡を外せ。」
 と言われていた。

 しまったな…。
 コンパってわけじゃないんだ。
 眼鏡を外したのは失態だった。

 そもそも眼鏡を外して見えなくなった所で問題が解決するはずもないのだが、南田はその点を理解していなかった。

 そして外した眼鏡をポケットに入れておけばいいものを、鞄にしまったままお手洗いに立ち、自分の席が分からなくなってしまった。
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