覚醒者3号-第二次調査報告-
私は少女と手を繋ぐ。

「私は黛まどかっていうの。貴女名前は?」

「名前…」

少女は表情を変えないまま、少し考える。

「素体773号」

「そういうのじゃなくて、ちゃんとした本名を…」

「ない」

少女は言った。

「機関の施設では、ずっと番号で呼ばれていた…名前なんてつけられていない」

「……」

そうか…。

素体は生まれた時から機関の人間に育成される。

機関の人間は素体を人間として見ていない。

あくまで覚醒者を造り上げる為の『素材』に過ぎないのだ。

素材に名前をつける者はいない。

「じゃあ…」

私は少女の柔らかく艶やかな黒髪をクシャッと撫でる。

「ななみ」

「…な…なみ…?」

少しだけ。

驚いたように、少女は目を見開いた。

「そう…773号で、ななみ。今日から貴女の名前は、ななみよ」

私は微笑んで、しっかりと少女…ななみの手を握り返した。

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