BAD & BAD【Ⅱ】

招かざるオリオン







「俺、もう逃げないよ」




迷っていた時間は、おしまい。


手の甲で涙を拭った顔つきが、凛々しくなる。



「今度こそ、幸珀を助ける……!」



勇ましくてたくましい、真修の決心。



私は朗らかに、口元を緩めた。



「頼りにしてるよ、真修」



一緒に、善兄の砦から抜け出そう。


善兄がここにいない、今が絶好のチャンスだ。




「じゃあ、とりあえず、この鎖外してくれない?」


「わかった!」



真修は近くに寄って、私の手首に巻かれた鎖を解こうとする。


しかし、ガチャガチャとうるさい音が鳴るだけで、一向に鎖は解かれない。



「ちょっ、何やってんの?」



早くしないと、善兄来ちゃうよ!


< 639 / 730 >

この作品をシェア

pagetop