Catch me



運転席から身を乗り出す
彼を捉え、伝わったと
思った。

やはり、かしこい人だ。

二本の長い腕が戸惑う様に
私に向かい伸びてくる。

「好きだ。…キミの
名前を呼びたいんだ。

そろそろ名前教えてよ。」


そう言ってフワリと
抱き寄せられる。



「聞きたいのは名前だけ?」



彼の肩に顎を乗せ
耳元で囁けば
夜景で照らされた
そこが真っ赤に染まる。


ホントだ。
真面目ちゃんなんだ。
クスッと笑みが漏れた。

でも、“好き”にはまだ早い。

…だから


「龍起、好きになってもいい?」



そう尋ねたら


「うん。」


そう、かすれた声が、
体中に響いて


「これから、宜しく。」


背中に回された腕に
いっそう強く
引き寄せられた。








《FIN》



















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