《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~
お祝い
スズラン───
スズラン……!!
誰かが呼んでる。
いつもの夢?
……いいや、違う。
「スズラン! スズラン…!!」
名前を呼ぶ声は、何処か悲痛でまるで大切な何かを探している様な叫びにも似ていた。
とても必死で、でも……懐かしい声。
耳の奥に届く、少し低めの優しい声。
「ッ…スズラン? 居るのか!?」
ひとりぼっちでさみしいの。
ずっとここでまってるの。
泣かないでちゃんとおりこうにしてるから。おねがい、はやくむかえにきて───。
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「っ…ん……もう朝、なの…?」
先ほど眠りに落ちたばかりの様に思ったのだが朝陽は平等に街を照らす。スズランの部屋にも薄い窓硝子を通して暖かい陽射しが届く。しかしスズランはまだベッドの上で丸くなっていた。
最近眠りが浅い所為か、頻繁におかしな夢を見る。何時もの夢の様で何処か違うよく分からない夢だ。夢など曖昧な幻だと気に留めなければ良いのだろうがこう何度も繰り返し見るとそうもいかない。
何かを案じているのかと危惧の念を抱いてしまう。