《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~
 だが裏腹に口を開けば辛辣な言葉ばかりをスズランによこす。まさに売り言葉に買い言葉。咄嗟に思ってもいない事を口にしてしまう。

「べ 、べつにっ!! さっきはライアに助けてもらったけど、わたしが頼んだ訳じゃないもの! それに次からは自分で何とかするし、わたしには構わないで!!」
(こんな事言いたい訳じゃないのに…! 早くお礼を言わなきゃ……)

 口にしてから後悔しても遅いと分かっていたのにそう言い返してしまった。案の定呆れた顔のライアに嫌味を返される。

「俺だって助けたくて助けた訳じゃあない、お前が鈍臭いからだろ?」

「…っなによ、鈍臭いって! さっきからずーっと子供扱いばっかりして、失礼だわ!」

 しかしライアのあまりの言い様に地面を踏み抜きたくなるのを堪えた。子供扱いされるととても悲しくなる。そんな事言われなくても自分が一番分かっているのだ。しかし一度言い返してしまったのでもう後には引けない。

子供(ガキ)子供(ガキ)と言って何が悪い? お前こそ助けてもらっておいて、礼の一つも言えないのかよ!」

 礼……。助けてもらった直後に口にしかけたがライアの言葉でかき消されてしまったまま。そして今、その機会を失ってしまった事に気づく。ちゃんと感謝の気持ちを伝えたいのに。
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