《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

真っ直ぐな心緒


 ───とても長く、そして短い一日。


 進みたいのに進めない。

 進めずただ、時だけが過ぎていく。


 そんなもどかしい毎日。


 何の為に此処にいるのか。
 誰を待っているのか。

 自ら〝答え〟を見つけないとこの夢からは永遠に目覚めることが出来ないから。

 今日も一人でこの森を彷徨うのだろう。

 ずっと一人で……。



「……パパ…っどうしてスズをおいていったの? どうして……」

 悲しさで溢れそうになる心のまま口から出た言葉は、何とも悲痛な声となって自身の耳に届いた。

 ───酷い頭痛と共に意識が浮上する。
 浅い呼吸を繰り返す肺。息を吐く度に喉を通る空気がとても熱く感じた。恐らく風邪を拗らせて高熱が出たのだろうとぼんやりした頭で理解する。

「スズ……目が覚めたのかい?」

 優しい声の方に顔を向けると少し眉を下げて困った様な顔をしたユージーンが目に入る。

「……マスター…?」

「うーん、まだまだ熱が高そうだね。もう少し寝ていなさい…」

「っ…嫌、こわい夢を見るの…! 眠りたくない!」

 スズランは思わず幼い頃の様に駄々をこねた。申し訳無いと思いつつ、父のような存在に甘えてしまう。そんな我儘を嫌な顔一つせずに優しく聞き返してくれるユージーン。
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