アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
「何? 今考え事してるんだけど……ああ、でも悪いのは君なんかに絆されたラインアーサの所為なんだ。なら少しは協力してくれるよね?」

 ラインアーサ? その名は確かこの国の……。

「わたしに…、出来る事なら何だってお手伝いします。でも…」

「だって、君なんでしょ? ラインアーサの想い人がこの酒場(バル)で働いているって聞いて見に来たんだけど、まさか君の事だったなんてね」

「え…?」

「よく分からない理由を付けて何日も酒場(バル)に通ってたし。この間だって青ざめながら雨の中君の事迎えに行ったよね。あ、でもその後フラれて帰って来た時の顔はすごく面白かったな」

 ラインアーサとはこの国の王子の名だ。だが、ハリの語る人物はどう考えてもライアの事にしか思えない。

「あの、それって……ライアの、事?」

「は? それ以外に誰がいるの?」

「っ! ハリさんは、ライアの知り合いなの?」

「知り合いも何も、ラインアーサは僕の命の恩人なんだ。だから彼だけは特別なんだよ……あ、そうだ。じゃあ鈴蘭には簡単な暗示をかけよう。簡単だけども強力な魔術をね」

「まって、ハリさん…! ライアの居場所を知っているなら教えてください。わたし…、どうしても…」
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