アーサ王子の君影草 ~スズランの杞憂に過ぎない愁い事~
 何せ国王を初め、この国シュサイラスアの民たちは祭りや祝い事を大層好む傾向にある。
 シュサイラスア大国の民度性は陽気で明るく、皆が皆協力し合う事に喜びを感じる。それは大きな祭りになればなる程、成功時の達成感は大きく、民はここぞと国を上げて協力し合い大騒ぎするのだ。その為かリノ・フェンティスタで最も祝祭(フェスト)が多い。
 王子と王女の帰国ともなれば全力で祝う───それがシュサイラスア大国だ。

「……今日から五日間お祭りかぁ」

 ため息混じりに独り呟くスズランは、この国の出身では無い。
 幼い頃。リノ・フェンティスタ全土を混乱に貶めた悍ましい内乱が起きた。
 スズランはその時にこの国へと疎開し移り住んだのだが、どうやら一緒に来た父親とは〝はぐれて〟しまったのだ。
 現在、住み込みで働かせて貰っている酒場(バル)のマスター、ユージーンに拾われ今に至る。当時の記憶は幼すぎたのか、とても曖昧であまり覚えていない。
 ユージーンやその息子のセィシェルは、スズランを本当の家族の様に受け入れてくれた。二人のおかげでスズランは今まで寂しい思いを全くせず、何も不自由なく生きてこられたのだ。
 感謝しきれない程多大な恩を感じている。
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