《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

ひらかない花蕾*




 ───君は今何処にいるんだ…。
 スズラン……。



 どんな夢をみて、どんな想いを廻らせているのだろうか。たとえ夢の中でも、君が辛い思いをしているのなら助けに行くから。
 君が毎晩見る夢に現れて、すぐ側で守りたい。

 必ず行くから、待っていて。



 ──────

 ───


「……もう時間、か…」

 羽の入った柔らかな枕に伏せていた上半身をゆっくりと起こす。その反動で頭がくらりとした。まるで貧血を起こしたかの様に揺れる視界。思わず頭を片手で支える。
 もう片方の手は熱を共有して(ぬく)くなった華奢な指先にしっかりと繋がれていた。
 繋がれている手から上へと目線を辿っていく。
 規則正しい呼吸によって上下する胸。
 細く、白い首筋。
 引き結ばれた小さな唇。
 瞼を縁取る長い睫毛は伏せられているが、ゆり動かせば今にも目を覚ましそうである。

 しかし、その瞼が開かれることは決してなかった。この状態になってから随分と月日が経つ。その間、ラインアーサは一日も欠かさず、毎日この部屋へと赴いた。

 つぼんだ花の如く、深い眠りについたまま目を覚まさないスズランの部屋に。
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