そのキスで、覚えさせて
「いらっしゃいませ、ご予約のお客様ですか?」
「いえ……」
答える遥希。
そのまま振り返って、顔を歪めてあたしに言った。
「満席だから、入れないんじゃね?」
まさかの事態だった。
料理コーナーのおかげで繁盛しているのは知っていたが、平日なのに満席だなんて。
「すみません。ただいま満席で……」
案の定、店員がそう言いかけた時、
「お前ら、冷やかしかよ」
久しぶりに聞く声が聞こえた。