A・O・I

蒼は私の身体を支える様に腰に腕を回すと、心配そうに私を見下ろした。


「本当に大丈夫?辛くない?」


「大丈夫だって……行こう。」


「うん……。」


ゆっくりと踵を返した時、背後で啓介の声が響いた。


「硝子さん!!お見合いの件、私は進めたいと思ってますから!!また連絡します!!」


啓介は私達の前に回り込むと、一礼をして去って行った。


「……さっきの人、今日のお見合い相手だったの?」


「……まぁ、うん……そう。でも、どうこうなる気ないから……。」


「でも、あっちはそうじゃ無いみたいだけど?」


「でも、有り得ないの……絶対……あの人とは……。」


「……え?」


「うぅん、何でもない。それに私、結婚なんて一生する気ないし……あなたの母親なんだから。」


蒼の顔を見上げると、心配そうな顔が覗いていた。

きっと私の消極的な言葉が、また気に入らなかったのだろう。


「家へ……帰ろう。」


「うん。」


帰り道、蒼は人気が無くなるのを見計らって、私を背負い歩き出した。

何も問わず、ゆっくり、ゆっくりと歩く。

いつの間にこんなに大きく、力強くなったのか?

私を簡単に抱える腕、安心感を覚える広い背中。

幼く女の子の様な顔をしてたのに、すっかり大人の男性になったんだ。

離したくない……愛しい私の子。




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