sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


幼いころの懐かしい記憶。数少ない、両親との思い出。

それを呼び起こすと絶対につらくなるからって、いつも頭の中のアルバムは固く閉じたままにしていたけれど……。


「ちっちゃい頃に一度だけ……あります。この子、その時もいたの覚えてる。ウツボって長生きなんですね」


今は不思議と、過去を過去として受け入れられる自分がいる。

少しは両親との楽しい思い出もあったんだなって、穏やかに思える。

いったい、どうして……?


「ああ。もしかしたらコイツも千那のこと覚えてるかもな。“あんときのちびが男連れてきたぞ。俺も歳取ったな~”とか思ってたりして」

「……“俺”って、この子オスなんですか?」

「いや、知らないけど」


また適当なこと言って……。でも、もしかしたら綾辻さんがこうして隣にいてくれるから、両親のことを思い出しても平気なのかな。

そうだとしたら、綾辻さんの存在って、私にとってすごく大切な――。


「――あれ? 千那ちゃんじゃない?」


そのとき、離れた場所から聞き覚えのある声に呼ばれて、思考が遮断された。

パッと振り向いた先にはひと組のカップルがいて、女性の方は私のよく知る相手だった。


「ま、円美さん!」


こんなところで会社の先輩と会うとは、すごい偶然!

目を丸くする私に早足で近寄ってくる円美さんは、なんだか華やいだ表情だ。それって一緒にいる男性が関係あるのかな。

ちらっと様子を窺った先の彼は、長身で甘いマスクの爽やか系イケメン。

もしやとうとう、円美さんのお眼鏡にかなう相手が現れた……?


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