sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
6.不穏な気配 

副社長の本音



デートから二日後の、八月一日。

毎朝行われる経理部内の朝礼で、詠吾さんが正式に会社の顧問弁護士となったことが、祥平さんの口から伝えられた。


「とはいえ、主に役員と関わることしかありませんので、皆さんには関係ありません。では、今日も忙しくなりますので、さっそく業務に取り掛かってください」


ノートサイズの大きな手帳を閉じて、自分の部屋に引き上げていく祥平さん。

先週のセクハラまがいの一件以来彼のことを警戒してしまうけれど、昨日も今日も何事もなかったかのように、淡々と“上司”の顔をしていて、とりあえず安心している。


「……さて。今日も帰れないぞ」


デスクに戻って、パソコンを前に気合を入れた。七月最終日の昨日もそうだったけれど、経理部の月末と月頭はとても忙しいのだ。

本当は円美さんに石油王のことを詳しく聞きたいのに、なかなかそんな時間もなく、仕事に追われてばかりだ。

ひたすら事務仕事に打ち込み、昼休憩も短めに済ませるとまたパソコンと睨めっこ。

オフィスの雰囲気もいつもより殺伐としているけれど、毎月のことなのでもう慣れた。


「はぁ……今日はここまでかな」


定時を過ぎると徐々に同僚たちが減っていき、二時間残業をした私も帰ることにした。

書類や帳簿を片付けて帰り支度を済ませると、部長である祥平さんにひとこと挨拶をしようとガラス張りの小部屋に向かう。

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