呪われ姫と強運の髭騎士
 それを繰り返すこと数回。
 
 ――結局、どうにもならないと諦めて疲れた身体を、修道院で休むことにした。

 

 お茶を両手で持ち、じっと考え事をしているソニアの姿は痛々しい。
 
 泣かないように耐えている様子は、修道院で暮らしていた時の明るい彼女とは打って変わって暗く影があり、シスターは眉尻を下げた。

「ソニア」
 
 隣に座り、肩を撫でるシスターの温かい手に相変わらずの優しさを感じ、ようやく笑みを見せる。
 
 シスターは今自分が首に掛けているロザリオを外すと、ソニアの首に掛けてやった。

「シスター! これは……!」
「新しい物より、毎日祈りを捧げて信仰心が籠められた物の方が効果が高いと聞きます。お古だけど」
「ありがとうございます」
 
 そう礼を言うソニアの声音がとても弱く、シスターは彼女を抱き寄せた。

「……一体、何が起きているのでしょう? 何も全く分らないんです」
 
 そのソニアの言葉にシスターは驚いて声を上げた。

「聞いていないのですか?」
と。

「どういうことなんです?」
 
 シスターは知っている。
 
 そして、彼女の驚きぶりからして周囲の者は知っている感じだ。

(知らないのは私だけ?)
 
 金槌で頭を殴られた気分だ。
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