呪われ姫と強運の髭騎士
「実はね、化粧水に香り付けをしたのはパメラなんですよ」
「パメラが?」
「ソニアの好きな花を吟味して、調香して私が作った化粧水と混ぜて整えたのです」
 
 そうだ、パメラ。
 
 今、彼女は?

「パメラは? 彼女にも会いたいし、お礼も言いたいです」
 
 ソニアの願いに、シスターは残念そうに眉尻を下げる。

「パメラもね、実家からお迎えが来たんですよ」
「いつ頃ですか?」
「三日程前ですよ」
 
 自分があの事故に遭遇した次の日だ。熱を出して寝込んでいた日。

(あんな事さえ起きなければ、パメラと会えたのに……)
 
 目に見えて消沈しているソニアにクリスは
「もしかしたら生誕祭で会えるかもしれませんよ? パメラ様も今年社交界デビューされるのでしたら、招待状が届いているでしょうから」
にこやかに言った。
 
 社交界デビューは、十五歳から十八歳までの間に行うのが普通だ。
 
 彼女と自分は同じ歳。
 
 それに生誕祭前に実家から迎えに来たと言うなら、社交界デビューさせてそこで結婚相手を見付けさせるつもりなのかもしれない。
 
 それが一番の近道だと、貴族なら誰でも思うから。

(生誕祭で会えたら嬉しいわ!)
 
 再会の時を想像すると、今からとても楽しみでつい顔が綻ぶ。
 
 そんなソニアを見てクリスが

「着飾って他の貴族の男子や騎士と踊るより、女性同士で和気藹々とお喋りする方がまだ良いようですな、姫君は」

 と快活に笑われて、ソニアは「そんなことありません」と頬を膨らませた。
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