呪われ姫と強運の髭騎士
『クリスフォード様も、とうとう身を固める決意をしたのね』

『結婚したら、奥様になられた方の実家でお暮らしになるのかしら?』

『その前に一度、ご一緒したかったわ』

『あらお止めになった方が宜しくてよ。最近は王太子夫妻と仲違いしていると噂よ』

『では、王太子妃と通じているという噂は本当なのかしら』

『それで王はクリスフォード様を、王宮から遠ざけようとなさっているのかしらねえ』

『いくらディヤマンの称号を持つ騎士だとはいえ、通じてはいけないお方と道ならぬ恋をするのは許されないことなのね』

『クレア家のご息女は、何も知らないのかしら?』

『ずっと修道院でお暮らしだったと聞いておりますから、世俗の噂には疎いかと……』

『クリスフォード様は満足出来るのかしら? ――ねえ?』

『国内屈指の財力を持つ家ですもの。それだけでも満足ではなくて?』

『でも、クレア家も――』



「ここまでそっと聞いていたけど、呼ばれて壇上に上がったから、その後の話は分からないのよ……」
 
 パメラの同情の声さえも、もうソニアの耳に届いていない。
 
 舞踏会に来ている数ある貴婦人達の心無い噂話。それはソニアを傷付けるのに十分すぎる内容だった。
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