呪われ姫と強運の髭騎士

(5)

 生誕祭二日目――

 ようやく社交界デビューの挨拶を済ませたソニアの周りは、賑やかであった。
 
 それはそうだろう。
 
 ソニアは国内屈指の富裕家。
 
 しかも、被後見人は国を治める国王。

 後ろ楯は強力だし財はある。
 
 しかも女主人であるソニアは、若くて可愛らしい。

 まるで大輪の咲き始めのピンクの薔薇を連想させる初々しさだ。
 
 最初、パメラと一緒にいたはずなのに、いつの間にか彼女がいなくなっていることに気付いた。
 
 ソニアは愛想を振り撒きつつ、取り巻きと化した集団の中から脱け出そうとしたが、向こうも愛
想を見せながら付いてくる。
 
 段々怖くなってきたソニアは、知らずにクリスの姿を探してハッと思い出す。
 
 ――今夜は所用があるとかで舞踏会に出席していないのだった。
 
 ソニアは落ち込むより憤りを感じた。

(何よ、昨夜のことも言い訳も何も言ってこないし! 勝手に王太子妃と密会でも何でもしていれば良いんだわ)
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