呪われ姫と強運の髭騎士
「――これは……」
 
 クリスは開けて息を飲んだ。
 
 柄と刃が繋がった剣だ。白銀に輝きを放ちまばゆい限りの。
 
 クリスは柄の部分にあたる場所を握り、天にかざしてみる。
 
 丁度、神台に飾られた十字架と重なる。

「……十字架を見立ててお造りになられたか……?」
「でしょう。ウィリアム様は『彼は神につかえることを放棄したことに気付いていない』と仰ってこれを依頼しましたから」
「……ソニア様のご両親やご兄弟に、間に合わなかったのが非常に残念でなりません……」
 
 クリスの言葉に教皇も項垂れた。

「ソニア様の兄君達は、この剣を取りに来る際の事故でなくなりました。さぞや無念でしたでしょう」

「……ソニア様を必ずお助けしなければ!」
 
 クリスは十字架に向かって白銀に輝く剣を掲げる。

「クリスフォード様、貴方ならきっと目的を達成できましょう。この国で『最強』で『強運』の持ち主ですから」
「私のこの力と運を全て使って、きっとソニア様をこの恐ろしい呪いから救ってみせます」
 
 確固たる意思を表情に浮かべるクリスを見て教皇は

「ソニア様とクリスフォード様に、勝利の神が味方するように私も影ながら祈りましょう」

 と十字を切った。
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