呪われ姫と強運の髭騎士
 ウィリアムの代で財産が膨れた最大の理由は、当時クレア城で司祭である神職者が管理していた、教会所有の荘園を没収したことにある。
 
 彼は神に仕える身であったが、俗身と同じように利益や財産に執着があった。
 
 クレア家に出入りする司祭ということで、気が大きくなっていたのか、それとも――自分がクレア家の身内だと錯覚したのか、財産管理に口を出すようになった。
 
 ウィリアムはそれに注意をしたが、口頭に止め様子を見ることにした。
 
 ――彼は自分に仕えるより前に、神に仕えている身。
 
 俗身で俗世間の中に生きていても、己のやるべき仕事は何なのか分かっているだろう――と。

「……だが、司祭は変わらなかった。それどころか、クレア家の土地にある教会所有の荘園は不作で納税を納められないと嘘の報告をし、納める納税を懐に入れていたのだ。三年目にウィリアムは密かに調査をした。納税を納めなかった三年は豊作で民達は、きちんと決められた納税を納めていた。私腹を肥やしていた司祭にウィリアムはとうとう荘園を取り上げ、城から出ていく事を司祭に告げたのだ」

『中央教会に申告しないだけありがたく思え!』
 
 そう言いはなったらしい。

「その夜の事だ。司祭は城内の祈祷所にウィリアムを呼び出した。そうしてこう告げた」
『荘園を私にお返しなさい。でなければ、子を授かるという神の恵みを受けることが出来なくなりましょう』
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